花形装飾活字を愛でる第2回「拡大と縮小」

一定の比率で左から100%、150%、200%でサイズを変更したPRINTERS’FLOWERS from エンスヘデ活字鋳造所(1891)

アドビが販売しているイラストレーターで、もっとも使われているツールの1つである「拡大と縮小」は、花形装飾活字でも活用する事が出来ます。元々は活版印刷の版という事から、サイズが定められ全てのパーツが一定の比率で作用するように仕組まれた美術ではあるんですが、アウトライン化されベクターデータとなった今は、サイズの変更に関して制約される事なく、目的とする美術の構築に便利に作用します。

500%拡大した図

緻密に引かれたアウトラインであれば、かなりの拡大であっても、デティールが崩れる事はありませんので、紙面の模様として、たくさんのパーツをテクニカルに組む必要も無く、1つだけを拡大し配置する事で、それ自体が既に美しい模様として表現する事が出来ます。また、縮小に関しては、例えば、印刷の場合は、それぞれの抱える印刷技法で刷る事の出来る線幅の限界が、縮小の範囲の限界と捉える事が出来ます。印刷ではない技術、例えば3Dプリントであれば、何処までいけるかは、機種に依存するので実験をしてみても良いかもしれません。モニターであれば表示される範囲になるでしょうし、何処でどのように利用するかが、それぞれで抱える「拡大と縮小」の範囲と言えるかと思います。

比率が著しく崩れた拡大と縮小

基本的に、花形装飾活字は一定の比率での拡大と縮小をお勧めします。アドビのイラストレーターで言うところのシフトキーを押しながら行わない拡大と縮小は、本来の美しさを損なってしまうだけではなく、技術面においても紙面の品位を落としかねない行為になるかもしれません。これに関しては花形装飾活字で最も注意しなければならない事の1つになるかと思います。

拡大と縮小を利用した組み見本

拡大と縮小を利用すれば紙面に立体感をもたらす事が出来ます。活版印刷用に用意された花形装飾活字は線の幅が一定で、並べた際に、どうしても絵の印象が一定になります。そこで、拡大と縮小を使う事で、拡大すれば線は太くなりますし、縮小すれば線が細くなりますから、絵にアクセントが付いて、とても豊かな表現として紙面を構成する事が出来ます。ついつい、活版印刷の版だから、本来の使い方から外れてしまうから、サイズの変更が出来るだけ避けてしまいがちなんですが、もちろん、サイズの変更をしない事で、本来の美しさを謳歌する事が出来るのですが、せっかく、アウトライン化され、ベクダーデータとなり、アドビのイラストレーターという自由を得たのですから、自由にサイズを変更して使う事も1つの選択肢として持つ事は、とても素敵な事であると思います。


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